ワシントンDCの自然 ~ ブルードX 羽化成功

©William Ash

アパートの低木は、今、セミだらけ。夕方にこうして殻から抜けると、羽が伸びきるまでじっとしている。このセミは、幸運にも完全に羽を広げることができた。ピンク系の肌色をしているが、どんどん黒くなっていくから不思議。

羽のなんという繊細さ。美しさ。自分のことは棚において、「これが生物というものか」と見入ってしまう。ただ、黒い眉毛が、なぜか志村けんのバカ殿様を思い出させて笑える。

ワシントンDCの自然 ~ ブルードX 成虫

画像のセミは、道に落ちていたものを拾ったもので、生きているセミは目がもう少し赤い。

ブルードXは、5月中に地下から出てきて、6月に壮大なるリサイタルを開くらしい。飛ぶのがへたで、飛べてもせいぜい60メートル。イナゴのように群れて植物を食い荒らすこともない。

今、近所の道路のいたるところに、不羽化の途中で体半分だけ出したまま死んでいるセミや、成虫になってすぐに死んでしまったセミ、羽が不完全だったり、曲がっているセミが、道にたくさんころがっている。その数は、公園の木のまわりではとくに多い。

素人の単なる推測だが、夏の間にまく除草剤や殺虫剤、冬に公道の雪を解かすためにまくソルトなどが、こうしたセミに影響を与えているのかもしれない。

1匹のセミは500個の卵を産むそうだから、その中の1匹でも生き延びて卵を産めば、セミの「虫系」は保たれるのかもしれない。でも、こうもたくさんの不完全なセミをみると、心配になる。

でも、はやく彼らの大合唱を聞きたい。うるさいそうだが、セミの声は子供のころの夏休みを思い出させる。昭和の夏休み 。かき氷にスイカ、すだれ。もっとも、ブルードXは、夏を待たずに6月には、地上の舞台から姿を消してしまう。そして、次のリサイタルは、17年後。

虫が、17年という長い周期というか寿命をもつのはなぜだろうか? 自然のシステムによって生まれた周期なのだろうから、意味があるにちがいない。

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ワシントンDCの自然 ~ ブルードX 羽化

©William Ash

前回につづき、ブルードXの続き。

アパート内の大木の幹では、多くのセミの幼虫が、地下の生活で使っていた殻を脱いで、羽化をしている。これは夕暮れ、暗くなってから始まる。羽化は、穴ぐらを出てから1時間以内に終わるというから、かなり速い。

驚くほど、コンパクトに折りたたまれた羽や体。画像の体は半透明だが、殻を完全に過ぎ捨ててから30分ぐらいで、もう成虫の黒っぽい色に変わる。

こうした変化をみると、自然のシステムのすごさを感じる。「何がこんな世界をつくっているのだろう?」なんて、またまた思う。

それに、セミたちを待ち受ける鳥や蜘蛛、野良猫などの天敵をまず満足させるために、最初に地下から出てくるセミのほとんどは、オスなのだそうだ。メスは、後からでてきて、交尾をして卵を産むという。

世界には3400種のセミがいるが、ブルードXのように周期的に大量発生するセミは、アメリカの東部にだけ見られるという。17年周期のセミは、ほかにも12グループあるが、ブルードXと呼ばれるグループはその中でも最大で、3種類のセミがいる。

自然は、おもしろい。

ワシントンDCの自然 ~ 噂のブルードX、ついに登場

©William Ash

ワシントンDCの街路樹は、今、セミに占拠されはじめている。その名も「ブルードX」。米国の東部の州に生息する17年周期のセミのグループで、先週のはじめに、1匹だけ木の幹にはりついているのを見たと思ったら、週末には幹の表面に上に向けてたくさんの幼虫が並び、夕刻から羽化を始めた。

17年の間、地面から20~30センチほどの深さの穴の中で、木の根の樹液を餌としてすごしていたらしい。今、近くの街路樹の地面には、直径 2 ㎝ぐらいの穴がボコボコあいていて、路上を大型コオロギのような虫が、ぞろぞろ歩いている。

たいていは近くの木を目指しているのだが、中には方向音痴もいるようで反対方向に向かおうとする幼虫もいる。それらを手でつまんで、木の下にもっていくと、20年ぐらい前に、日本でアゲハの幼虫を育てていたころを思い出す。

ファーブルじゃないが、昆虫というものは神秘の塊で、精密、繊細、きわまりない。

とはいえ、ものすごい数になってきていて、ちと、薄気味悪いでもない。木の周りには抜け殻がたくさん落ちている。木から落ちたり、路上で踏まれたりした死骸も、そこら中に転がっている。

「せっかく地上に出てきたのに」

同情してしまうが、まあ、17年間も地下で生きてこられたのだから、虫としてはかなり長い一生。それに、17年目にあたる今年は、4046㎡ あたり 140万匹という数で登場する。ということは、1㎡あたり350匹? 想像もつかない。

鳥たちにとっては、17年ぶりの食べ放題。この夏、鳥は太るにちがない。

 

追記 2021年5月22日:

幼虫の数が増えるにつれて、幼虫が羽化したあとの抜け殻が、いたるところで見られるようになった。木だけでなくて、電柱や低木、オオバコのような雑草の葉の裏、フェンス、ゴミ箱、コンクリートの壁などでも羽化していた。

追記 2021年5月26日

15州で発生中。西はイリノイ州、東はNY州、南はジョージア州、北はミシガン州までという広範囲。高木はもとより、DCのアパートの生垣の低木もセミだらけ。雑草の影にもいる。こんな光景、見たことがない。「セミは木を見上げて探すもの」という先入観が消えた…。

 

ギアトーク 8 ~ Wista 45 VX テクニカルカメラ

ギアトーク 1~ 9 では、
使ってきたカメラやフォトテクニックなどを紹介しています。

(メインメニューの「Resources」の「ギアトーク」で、掲載後は、いつでもご覧になることができます。)

©William Ash

Wista 45VX(ビスタ45VX) テクニカルカメラは、金属製平底式カメラです。前部スタンダード(レンズボード保持枠)を使って、ライズ、シフト、スイング、ティルトのあおり、後部スタンダード(ボディ本体)を動かすことで、スウィング、ティルトのあおりが可能です。長尺レールもあり、頂点距離が最も長いものから短いものまで、幅広く使えます。蛇腹をたためば、とても頑丈でコンパクに変身します。

Wista 45VX で撮影した画像はこちらです。

このカメラのすばらしさは、画像の質のよさだけではありません。パースペクティブとフォーカスプレーン(ピントを合わせる範囲)を、かなり自由に決めることができます。

フイルム面(後部スタンダード)で、パースペクティブ、またはフイルム面とレンズ面、物面の線がどのように一点に収束するかを決めますが、もっとも基本的なのは、ビルの線を平行にすることです(下の画像を見てください)。フイルム面は、ファーカスプレーンもコントロールしてます。レンズ面(または前部スタンダード)は、どのようにフォーカスプレーンが被写体と交わるかを決めます。

物面の画像をシャープにするためには、二つの基準があります。レンズ面、フイルム面、物面が平行な場合(A)と、 1点に集まる場合(B)です。(B)はシャインプルーフの原理( Scheimpflug Rule)と呼ばれていて、主に、パースペクティブと焦点のゆがみを利用して、クリエィティブな画像をつくるために使われます。

 

フィルムの魅惑

4×5 のフイルムは、一度使いだすととりこになってしまいます。ライトボックス上のポジとネガの質の良さといったら、特に小さなフォーマットのものに比べると、官能的といっていいぐらいです。

ただ、大判のフイルムを使うと、カメラやレンズだけでなく、その他の必需品(シートフィルムホルダー、かぶり布、三脚、アームカバー、ルーペなど)も、大きくなってきます。

 

フィルム取り扱い上の問題

フイルムの取り扱いは、ちょっと面倒です。フォルダーには、たった2枚のフイルムしか入れることができません。それで、複数のフォルダーをいっしょに運ぼうとすると、重くなりかさ張ってしまいます。野外での撮影には向いていません。加えて、アームカバーをつけて、フイルム交換をするのに適した場所を見つけることも必要となってきます。
僕は、 6×6 と 6×12 のフイルムバックを装着して使うことで、この問題を少しですが、クリアしました。フイルムタイプが何であろうと、大判カメラはシステムサイズも大きいです。でも、ゆっくりとした撮影ペース、そして画像のコントロースが効くという点で、とても魅力的です。

©William Ash, Photo: Wista VX and

ワシントンDCの風景 ~ Black Lives Matter Plaza

©William Ash

黄色の大きな字で、Black Lives Matter  と書かれた Black Lives Matter Plaza((ブラック・ライブズ・マター・プラザ)は、ラファイエット・プラザまで、2ブロックも続いている。道の先には、ホワイトハウスが見える。 Click on the image for a larger view.

ギアトーク 7 ~ Horseman SW612 パノラマカメラ

ギアトーク 1~ 9 では、
使ってきたカメラやフォトテクニックなどを紹介しています。

(メインメニューの「Resources」の「ギアトーク」で、掲載後は、いつでもご覧になることができます。)

©William Ash

ホースマン SW612 (Horseman SW612)は、  6×12 の中判パノラマカメラです。中判サイズにしては、驚くほど小型で、取扱も簡単。 6×6 のマミヤ6レンジファインダーカメラと併せて、補足的に使っていたので、旅に出るときは、マミヤ 6 とホースマンがいつもいっしょでした。

ホースマン SW612 で撮った写真はこちらです: Horseman SW612

このカメラの操作は、完全にマニュアルで、とてもベーシックです。

  1. ピンとを合わせる
  2. 絞りの設定
  3. シャッタースピードの設定
  4. シャッターチャージをする
  5. 撮りたい画像をフレーム内におさめる
  6. シャッターを押す
  7. 解除リバーをクリックする
  8. 巻き上げレバーを巻き上げる

 

ピント合わせ

ゾーンフォーカスで、距離設定をヘリコイド上のピントリングの被写界深度目盛を操作して決めます。これはとても単純な操作で、レンズが 55 mm Grandagon のような単焦点レンズの場合です。

90 mm と 135 mm の場合、ピントグラス(グランドグラス)、またはアクセサリーのレンジファインダーを使いました。

ピントグラスが最も正確ですが、ピント合わせに時間がかかります。
まず、ダークスライドをフイルムバックに挿入して取り外し、ピントグラスと入れ替え、ピントを合わせます。そして、ピントグラスをはずして、フイルムバックを再装着します。この後に、フイルムバックのダークスライドを、取り除くことを覚えておくことが肝心です。忘れがちなので、僕はダークスライドの色をちょっとかえて、挿入されていることを忘れないようにしました。

アクセサリーのレンジファインダーは、中間から長距離用に向いています。が、焦点距離が最小限になるにつれて、ちょっと技術が必要になってきます。レンジファインダーについては、ギアトークの Part 9 をぜひご覧ください。

©William Ash, Photo: Horseman SW612, 55mm Grandagon, and Konica Infrared Film

 

絞りの設定

SW612 のレンズは大判レンズなので、多少、限界があります。開放絞りは、ピントグラスをつかってピントを合わせるためであり、撮影に使う絞りは f/11 以下になります。開放絞りで撮影してしまうと、画像の周辺がソフトになるけられが起きます。55 mm のような単焦点レンズの場合は、センターフィルターが、コサイン4乗則による周辺光量の不足を減らして、画像の質をあげてくれますが、2回ほど露光が止まります。このカメラを手に持って使うためには、光量が少ない場合、限界があったり妥協しなくてはいけません。僕は、主に ISO 400 のフイルムを使いました。

 

ビューファインダー

明るくクリアです。ファインダーマスクを、焦点距離によって使い分けます。フォーマットは、6×12, 6×9, and 6×7 の3種類。僕は、 6×12 しか使わなかったので、6×9、 6×7 の部分をやすりで削って取り除き、見やすいようにしました。ゆがみのために、マスクの端は曲がりましたが、幸いにも、ボディーに内蔵されている水準器をビューファインダーで見ることができるので、水平にカメラを保つことができます。ただ、縦の画像をとりたいとき、特に手でかかえて縦の画像をとるときは、ちょっとやっかいでした。また、レンズキャップの端に黄色のテープをはって、ビューファインダーをのぞいたときに見えるようにして、キャップの取り外しを忘れないようにしました。

 

使いやすさ

©William Ash, Photo: Horseman SW612 and 55mm Grandagon

テクニカル上の限界と弱点はあるものの、使っていて楽しいカメラでした。6×12 つまり 2:1 のアスペクト比は、横でも縦でも、さまざまな撮影に使えました。ひとつのフイルムからたった6枚の写真しか取れとれませんが、ともかく使いやすい。僕の ebook 写真集 Futon Daiko: A Japanese Festival  のほとんどの写真は、このカメラで撮影されたものです。

ギアトーク 6 ~ Mamiya 6 (マミヤ6)

ギアトーク 1~ 9 では、
使ってきたカメラやフォトテクニックなどを紹介しています。

(メインメニューの「Resources」の「ギアトーク」で、掲載後は、いつでもご覧になることができます。)

©William Ash

Mamiya 6(マミア 6) は、6x6の中判のレンジファインダーカメラ。レンズマウントがボディの中に収まるので、とてもコンパクトなカメラです。このシリーズは、Mamiya 6 と Mamiya 6 MF の2種で、Mamiya 6 MFの方 は、パノラマフォーマットの写真を35 mmのフィルムで撮ることができます。レンズは、50mm f/4.0、 75mm f/3.5、150mm f/4.5 の3種類。 リーフシャッター方式により、シャッターを切るときにぶれも起こらず静かなので、人目を惹かないし、ローライトでも三脚なしで撮影ができます。

マミヤ6(Mamiya 6)で撮った画像は、こちらです。

15年間にわたって愛用し、いろいろなプロジェクトに使いました。正方形のフォーマットと、自然な使いやすさを考えたレンジファインダーのデザインが大好きでした。サイズもちょうどよく、どこへでも持ち運びできました。チベット、日本アルプス、カナダのニューファンドランド島のグロスモーン国立公園、アメリカ南西部、四国88か所遍路道にも持っていきました。写真集「築地ー東京魚市場組曲」のほとんど Mamiya 6(マミア 6)で撮ったもので、それ以外の数枚は、Mamiya C220 を使用しました。マミヤ6 (Mamiya 6) は、長い間、本当にすばらしいコンパニオンでした。デジカメに移った今でも、大事に持っています。

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ギアトーク 5 ~ Pentax 645D DSLR

ギアトーク 1~ 9 では、
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Pentax 645D は、中判デジタル一眼レフカメラです。ブログのメイン州と東京の写真は、ほとんどこのカメラで撮りました。ご覧になりたい方は、下のPentax 645D をクリックしてください。

Pentax 645D.

このカメラ用には、テレコンバーターと4つのレンズを持っています。レンズの中では、55 mm レンズを主に(95%)使っています。

 

超便利な機材用のバックパック

このシリーズは、カメラもンレンズも重いので、運搬には、容量が40リットルの Osprey Farpoint 40 を使っています。下の画像を、クリックして拡大してみてください。ショルダーハーネスやウエストベルトが、とても快適です。背負ったままで、1日8~10時間ぐらいは、歩き続けることができます。デザインも写真専用のバッグよりも優れ、ハーネスやベルトは、飛行機に乗るときなど使用しない場合は、背中があたる面についているパネルの中にしまい込み(中央の写真)、側面についているハンドル、または取り外しができるショルダーストラップを使います。

©William Ash

バックパックに機材を詰めるとき、パットやディバイダ―を使います。レンズには、シンクタンクフォトのベルトシステムを採用しています(Think Tank belt)。ベルトにレンズをつければ、すぐに使用できるし、バックパックの中にしまうときには、ベルトがレンズを守ってくれるという利点があります。カメラは、パットつきのインサートに入れて、メインコンパートメントの中。ナイロン製の袋に入れてあるのですが、この袋はカメラを首からかけているときにも使い、雨やほこりから守る役目をしてくれます。また、ポケットが内側、外側にいろいろついていて、小物や衣類、スナックなどもいっしょに入れることができます。この Osprey Farpoint 40 は、FUJIFILM X シリーズを持って旅行するときにも使っています。

 

三脚は?

 最初の画像に映っているマンフロット 441 カーボン三脚 (Manfrotto 441 carbon fiber tripod) です。これに、短いセンターコラムとアルカスイスのボールヘッド P0 (Arca Swiss P0 ball head) をつけて使用しています。Pentax D645 には、便利なことに、側面と左面の二か所に三脚用のねじ穴があるので、縦位置でも横位置でも三脚を使うことができます。おかげで、長時間露出が必要なとき、三脚上でカメラのバランスをとることができます。

 

ND フィルター

Pentax 645D に、ときどきNDフィルター(neutral density filters) を使います。経験から、6stop の NDフィルターが、一番、使えるように思います。わざとぶれた写真をとるために長時間露出をしているとき、ほとんどの光のレベルで、カメラの光学ファインダーを通してフォーカスすることができます。このカメラとNDフィルターのコンビネーションによって、東京の写真集、Earth, Water, Fire, Wind, Emptiness: Tokyo Landscape が生まれました。

©William Ash

Photo: Pantax 645D, D-FA 55mm, and 6-stop ND filter