Irma Passing ~ イルマが通る

このあたりは電線が地下を通っているために停電がなかったので、テレビやネットでずっとハリケーンの動きを見ていることができたのだが、夕方の7時から強風となり、真夜中の2時前後の1時間ぐらいは、最大風速が秒速38mに達した。数十秒ごとに吹いては弱まり、吹いては弱まり、まるでレーダー上のハリケーンの目やその周りをぐるぐるまわる風のバンドの動きを、音で感じているかのようだった。実に長かった。

フロリダ中央部でも、外出禁止令が出た。電力会社のトラックが、この中を必死に走り回って、電気の復旧に尽くしているからだ。閉まった店を狙った泥棒も出るので、警官がこの暴風の中をパトロールをしていた。外に出ている人間は、外出理由が正当なものでないかぎりは、逮捕された。

避難所は、ペット可の場所も多いが、すぐに定員に達した。特別な介護の必要な人たち用に、医療器具を備えた避難所もあり、さすがアメリカというか、かなり避難対策ができている。もちろん、ガン、ドラッグなどの持ち込みは禁止。ペットのえさ、自分用の寝具、軽食などは持参する。ヒューストンのあとだけに、かなりの人が早めに避難した。

この数日、州知事や地区の代表が、数時間ごとにテレビに登場して、「家は建て直せるけど、命は取り戻せない」と毎回言って、最後の最後まで避難を訴えたり、現状説明や避難所の情報を更新した。おもしろかったのは、どこの地区の代表だったか忘れたが、「こんなときに泥棒をするやつは、許さない。極刑になるから覚悟しろ」みたいなことを言った人がいた。

またハリケーンの上陸前には、「困ったら援助をしてもらえばいい」と援助をあてにして、避難命令が出ているのにもかかわらず沿岸の危険地域にとどまっている人たちには、「救急隊員の命を犠牲にすることはできない。ハリケーンが上陸したら、助けにはいかない」とはっきりと言っていた。

Waiting for Irma~ ハリケーンを待つ

もうすぐ私たちの住む中央フロリダも、ハリケーンによる暴風域に入る。カテゴリー4とも5とも予想されていたイルマは、幸いにも西海岸に上陸するとカテゴリー2に落ちた。

先週には、家の上を風速200メートルを超えるハリケーンが通過すると予想されていたが、先日、急に西側にそれ、今日は勢力を落としてくれた。突然のコース変更に、油断していた西海岸の人たちは、あわてて車に乗り込んで北へ向かった。数多くの豪華客船も予定をキャンセルして、先週、フロリダの港にもどってきたが、一万を超える観光客の多くは、キャンセルや満席で飛行機便やホテルが取れず、300か所をこえるフロリダ内の避難所へ向かった。

西であれ、東であれ、その猛威はフロリダ半島の全域に及ぶほど巨大で、上陸した反対側の東海岸では竜巻が発生して、家が倒壊した。ハリケーンと竜巻というコンビネーションに加えて、高潮が予想され、海岸部はすでにみな避難している。

これが温暖化の影響でなくてなんだろうか……?

 

Settling in for the Night ~ ハリケーンイルマを待つ夜 

中央部にあるこの地域では、今夜から明日の月曜日の2時がピークらしい。懐中電灯をそばに、寝ることになる。水は一人当たり一日4リットルを準備するように言われたが、先週の火曜日の段階で売り切れで、手にいれることは難しかった。それで、持っていた食品用に作られたバケツ(20リットル)の6個に、フィルターをとおした水を入れた。

暴風がはじまると、犬も外にトイレにいけなくなる。人の勧めで、雑草がはえたままの土を空き地から引き抜いてきて、ポーチに広げてトイレをつくった。が、まだひかりは1度しか使ってくれていない。

メイン州で毎年、雪嵐による停電にそなえた経験が、今、常夏のフロリダで役に立つとは思わなかった。先週からイルマの予想に忙しかったニュースキャスターたちの声は、もう枯れて、しゃがれ声になっている。アメリカでは、気象予報士がやけに情熱的で、ニュースキャスターに負けていない。