アメリカ国内の引越 Part 2からのこぼれ話
我が家の最初のニューファンドランド犬のKaiは、体重が75キロの真っ黒けの大型犬だった。最初のオーナーが庭で兄弟犬といっしょに飼っていたが、飼育できなくなり、ニューファンドランド専門のレスキューセンターに連れてきたところを、私たちが引き取った。4歳だった。
この犬は、我が家に来るまではずっと庭にいたので、家の中にいられること、そしてかまってくれる家族ができたことがよほどうれしかったらしい。引越の準備が始まると、心配げな顔をしはじめた。
引越当日、Kaiは大きすぎて、UHAULのトラックには乗せられないので、荷積みを終えると、2階にある Kai 用の超巨大ケージに Kai を入れ、
「待っててね。すぐにもどってくるからね」
と言って玄関をでた。
「ウォーン。ウォーン」
大きな悲しげな声が、外まで聞こえてきた。あんな声を聞いたことはなかったので、夫も私も衝撃を受けた。もうこれは、いっしょに連れて行くしかない。
しかし、Kai よ。
君はデカすぎるのだ。どうしよう……。
2階にもどって様子をみると、Kai は大喜び。ケージから出して、玄関のドアをあけると、真っ先にトラックのドアまで自分で走って行って、
「いっしょに行く。乗せてくれー」
UHAULのトラックの運転座席は、とても高い。ドアを開けると、Kai が乗ろうとして、前足を助手席のイスの乗せた。が、できたのはそこまで。後ろ足がどこにも引っかからない。ジャンプなんて、無理。ニューファンドランド犬は、運動神経ゼロ。
仕方なく夫がしゃがんで、Kai の後ろ足を後部から持ち上げようとした。すると、
「はい、そのまま持ち上げて」
Kai はリフトに乗ったみたいに、夫の手の上にそのまま全体重をのせた。「オー」と、夫から声がもれた。75キロの犬だもんね。全体重をかけられたら、そりゃ重たいわ。ともかくこうして、Kai は助手席に乗ることに成功。
でも、おい、
そこは私の席じゃない?
Kai は降ろされたくないので、座席の中央で小さくフロントガラスに向かって「問題ありませ~ん」みたいにお座りをした。でも、50分もこのままでいられるわけがない……。
トラックが走り出して数分もすると、Kai は、私の方に向きを変えて、私と背もたれの間に顔を突っ込んできた。
Kaiよ、私を押しのけて、横になるつもりだろう?
肩越しに Kai の顔を見てみれば、あっちも大きな目をして私を見て、
「ウッシッシ」
それから引越先につくまでの間、Kai は少しずつ頭を突っ込み、そして体を入れ込み、ついには助手席に横になった。作戦成功。そして私は、おしりのほんの少しの部分をかろうじて助手席にのせて、すべり落ちないようにダッシュボードに手をかけて耐えていた。
Kaiちゃん、
今でも、あの時の君の
「いい? いいよね?」
って訴えていたかわいい顔を忘れられないよ。
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