アメリカ国内の引越・Part 2 こぼれ話 ~ 僕を置いていかないで

UHAULトラックに乗りこんだKai.  ©William Ash

 

アメリカ国内の引越 Part 2からのこぼれ話

 

我が家の最初のニューファンドランド犬のKaiは、体重が75キロの真っ黒けの大型犬だった。最初のオーナーが庭で兄弟犬といっしょに飼っていたが、飼育できなくなり、ニューファンドランド専門のレスキューセンターに連れてきたところを、私たちが引き取った。4歳だった。

この犬は、我が家に来るまではずっと庭にいたので、家の中にいられること、そしてかまってくれる家族ができたことがよほどうれしかったらしい。引越の準備が始まると、心配げな顔をしはじめた。

引越当日、Kaiは大きすぎて、UHAULのトラックには乗せられないので、荷積みを終えると、2階にある Kai 用の超巨大ケージに Kai を入れ、

「待っててね。すぐにもどってくるからね」

と言って玄関をでた。

「ウォーン。ウォーン」

大きな悲しげな声が、外まで聞こえてきた。あんな声を聞いたことはなかったので、夫も私も衝撃を受けた。もうこれは、いっしょに連れて行くしかない。

しかし、Kai よ。
君はデカすぎるのだ。どうしよう……。

2階にもどって様子をみると、Kai は大喜び。ケージから出して、玄関のドアをあけると、真っ先にトラックのドアまで自分で走って行って、

「いっしょに行く。乗せてくれー」

UHAULのトラックの運転座席は、とても高い。ドアを開けると、Kai が乗ろうとして、前足を助手席のイスの乗せた。が、できたのはそこまで。後ろ足がどこにも引っかからない。ジャンプなんて、無理。ニューファンドランド犬は、運動神経ゼロ。

仕方なく夫がしゃがんで、Kai の後ろ足を後部から持ち上げようとした。すると、

「はい、そのまま持ち上げて」

Kai はリフトに乗ったみたいに、夫の手の上にそのまま全体重をのせた。「オー」と、夫から声がもれた。75キロの犬だもんね。全体重をかけられたら、そりゃ重たいわ。ともかくこうして、Kai は助手席に乗ることに成功。

でも、おい、
そこは私の席じゃない?

Kai は降ろされたくないので、座席の中央で小さくフロントガラスに向かって「問題ありませ~ん」みたいにお座りをした。でも、50分もこのままでいられるわけがない……。

トラックが走り出して数分もすると、Kai は、私の方に向きを変えて、私と背もたれの間に顔を突っ込んできた。

Kaiよ、私を押しのけて、横になるつもりだろう?

肩越しに Kai の顔を見てみれば、あっちも大きな目をして私を見て、

「ウッシッシ」

それから引越先につくまでの間、Kai は少しずつ頭を突っ込み、そして体を入れ込み、ついには助手席に横になった。作戦成功。そして私は、おしりのほんの少しの部分をかろうじて助手席にのせて、すべり落ちないようにダッシュボードに手をかけて耐えていた。

Kaiちゃん、

今でも、あの時の君の

「いい? いいよね?」

って訴えていたかわいい顔を忘れられないよ。

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アメリカ国内の引越 ~ Part 2 州内の引越と犬

引越2回目 メイン州内の移動

2008年の春、第2回目の引越は、70 km (44 miles)、J町から車で1時間離れたS町へ。1回目と同様に、UHAUL の20 feet のトラックをレンタルし、夫が運転した。

© William Ash

今回は、義父母の「運搬の手伝いをするよ~」という、たいへんありがたい(ながらも無謀な)申し出をお断りし、夫が一人で荷物の運搬をして、家具などは私が手伝った。たった44 miles の引越。楽勝だと思った。

今回の引越は1回目と同じで、J町→ S町と、 one-way のレンタル になるはずだった。

 

one-way の場合、自家用車はどうするか?

(1)トラックにつないで引きずっていく

(2)家族の他の人が自家用車を運転して、トラックの後についていく

 

ところが、

我が家の大型犬は、大きすぎてトラックに乗せられないし、プリウスの中に入れてひきずっていくには不安があるので、(1)は不可。

信じられないことに、

私は運転ができない。免許をもっていない……。(2)も不可。

つまり、one-way のレンタルはできない。

 

仕方なく、下のような手順となった。

まず、夫が愛車プリウスに乗って、引越先のS町でトラックをレンタル。プリウスは、UHAULの駐車場に置かせてもらう
→ トラックに乗って、J町に帰宅
→ トラックに荷物を詰め込めこんで、犬は家に残して、二人だけでS町に行って荷を下ろす
→ トラックをUHAULに返却し、その駐車場にとめておいたプリウスに乗って、J町の家にもどっ犬をひきとる
→ 二人と1匹そろって、S町にまた向かう。引越完了!

 

第1回目の引越とちがうところは、

トラックをピックアップする店と、ドロップオフする店が同じということ。

こういう場合、

基本料金に移動料金が含まれず、返却時に走行距離に応じて請求される。

 

引越費用
2021年2月のルートで計算してみると、

 

トラックレンタル料3日分:
20フィートの3日分のレンタル基本料金 ~ 119.85ドル
移動料金 ~ 1マイルにつき0.99ドルの移動料金がかかる。往復したので88マイル走り、0.99ドルx44マイルx2=87.12ドル
合計で、およそ207ドル

ガソリン代:
トラックのマイレジが最悪で、1ガロン当たり10マイル。よって、44マイル x 2 ÷ 10マイル X 2.7ドル=23.76 ドル

保険料3日分:
14ドル x 3 = 42ドル。任意だが、加入を絶対にすすめる。

Environmental fee(環境料):
3ドル。この怪しげな料金は、トラックの部品やジャンクの破棄、リサイクルのための費用と会社側は説明している。2008年3月からいきなり追加された料金だ。

その他:
二人で家具を運ぶのに、19ドルの lifting and moving straps を購入。軽々とベッド・フレームでも運べたので驚いた。重い植木鉢とか、本箱とかもOK。優れものなので、おすすめ。アマゾンで買える。私たちは、腕にひっかけるタイプを購入したが、肩にかけるタイプもある。

荷物の運搬について:
UHAULのサイト内に、荷物の運搬だけを手伝ってくれる人を頼めるサイト(Moving Help)があるし、トラックをレンタルすると、会計のときにそういった画面も出てくる。1時間あたり二人頼むと、80 ~ 100ドルぐらい。

5回目の引越のときに、このサイトを使って二人頼んでみたら、プロのような人がきて、なかなかよかった。物の取り扱いに神経質な夫も、満足した。つまり、評価のいい人たちを選べば、心配ないようだ。おすすめです。でも、事前の連絡などは、しっかりとやりとりした方がいい。

 

引越費用の税抜きの合計金額は、

およそ295ドル。

こんな金額で引越ができた。

さて、次の3回目の引越は、

業者に頼んでもっと短い距離の引越をした。

果たしてその料金はいかに……。

 

アメリカ国内の引越 ~ Part 3 に続く。

 

アメリカ国内の引越 ~ Part 1 は、こちら

アメリカ国内の引越 ~ Part 1 こぼれ話は、こちら

 

 

アメリカ国内の引越 Part 1 こぼれ話 ~ 除雪をしたのは誰?

©William Ash

アメリカ国内の引越 ~ Part 1 の余談になるが、引越の前日に、メイン州に雪が降ってしまった。借りた家には、入り口から家まで75mぐらいの私道が続いているので、

「雪が積もっていたら、トラックが入らない、、、どうする?」

メイン州に向かいながら不安になった。ところが、実際に家についてみると、しっかりと除雪がしてある!

感謝感激で、すぐに大家さんにお礼の電話をすれば、

「いや、知らないよ。」

しばらくすると、謎の50ドルの請求書がポストに入っていた。あわてて請求書にあったMr. T に電話をすると、

「前に住んでいた人から、引越したという連絡は受けていなかったので、いつものとおり除雪をしただけです。あんたたちが今住んでいるのだから、払ってください」

まあ、他の人を探すのも面倒だし、今後もこの人にお願いしようということになって、支払うことにした。

果たして、前の居住者は、
本当に除雪の解約をしなかったのだろうか?

1年半年後、私たちがこの家を引越すことになった。それで、Mr. T の奥さんに除雪の解約を告げておいた。

ところが、新しい家に引越したあと、また請求書が転送されてきた。私たちが引越した後に、数回も、あの家を除雪している。しかも、あの家には他の人がすでに住んでいるのにだ。すぐに電話をした。

「すでに解約をして、引越しているんですけど」

「そんなことは聞いていません」

奥さんは引き下がらない。やっぱりな~と思って、

「こちらには、X月X日に解約の電話を入れたという記録があります」

きっぱりと言うと、彼女は大きなため息をついて、

「そうですか」

やっとあきらめた。

メイン州では、冬の除雪作業が大事な副収入になっている人たちがいる。なんたって、雪嵐でも真夜中でも、がんがんにトラックを走らせて除雪しまくる。

Mr. T も、本業は農業。一度、彼の農場の横にある小さなお店にいったとき、3,4人の子供たちが彼のまわりにいて、「生まれた子豚に、ソックスを編んであげるわ。パパ、小屋は十分に暖かいかしら?」と、かわいい会話をしていた。

除雪の料金だが、決して安いものではない。

10 cm 以上の雪が降ったときは、頼まなくても来てくれる。わが家は、75 m も私道があったので、1回で50ドルの除雪料金をとられた。5分足らずの作業で、50ドル。

しかも、大雪の場合はすぐにまた雪が積もるので、数時間後にまた来て除雪をし、30ドルがその度に加算された。

結局、雪のたびに除雪料金が発生して、一冬あたり、最低でも800ドルは支払った。

こんな顧客が4,5人いるだけでも、いい副収入になるから、顧客を失いたくない気持ちはわかる。でも、こちらとしては、しっかり記録をとっておかないといけないなと、痛感。

ニューハンプシャー州の知人の家の私道は、もっと長くて150 m ぐらいあり、1回の除雪料金は150ドル。さらにこれに、私たちと同じような追加料金が加算されたらしい。

この除雪作業だが、ドライブウェイような私道ではなく、公道を除雪する人たちもいて、彼らは町役場に雇われている。人の家の入り口をよけずに、わざとたっぷりと雪を積んでいくような人たちもいる。

この人たちとの知恵比べといえば聞こえがいいが、数年にわたる戦いの話は、いずれまた……。

アメリカ国内の引越 ~ Part 1 はこちら。

 

 

 

 

メイン州の風景 ~ Rock

©William Ash

アーカディア国立公園のスクーデッィク・ポイント(Schoodic Point in Acadia National Park, Maine) Click on the image for a larger view.

 

石ころは 色  音 時

石ころは 顔 思い出 星

石ころは 勇気 優しさ 重さ

 

メイン州の風景 ~ Schoodic Point Revisited

©William Ash

アーカディア国立公園のスクーデッィク・ポイント(Schoodic Point in Acadia National Park, Maine) Click on the image for a larger view.

先月、中西部のミズーリ州からワシントンDCに引越をした。何がうれしいかと言えば、海があり、近隣の州には海だけでなく、山もあること。メイン州での暮らしを経験してから、すぐに海や山に行けない暮らしが、いかにストレスになるかがわかった。

日本では40年近く東京暮らしだったが、やっぱり日本人だ。海と山がまわりになくちゃ、生きていけない。

メイン州の暮らし ~ Shining Sea

メイン州のアーカディア国立公園の浜にて。

10年住んだイン州を離れて3年になるが、あの美しい自然が懐かしくてしかたがない。さすが、「バケーションランド」という異名をもつ州だけあった。

でも、冬が来るたびに、厳寒のメイン州を離れてよかったと思ったりもする。とくに、今、住んでいるミズーリ州は、冬でも東京のような気候であり、町中を歩けたりする。体の開放感が、全くちがう。

ずっと「自分たちにとって幸せな生活環境とは何か」を考え、実験してきたが、人間の生活には、自然、人、文化など、様々なものがあってこそ驚いたり、感動したりして豊かになる。問題は、いかにそれらをいっしょにつなげるか……。

日本でも田舎暮らしがはやっているようだが、いい点も悪い点もあり、来年こそは、これまで体験してきたメイン州の田舎暮らし、カンザスシティの都会暮らし、フロリダの巨大分譲地暮らしを比較して、ブログに書いてこうと思う。

翼があればいいなぁ……。

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