メイン州の詩 ~ Ice Storm 5

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©William Ash  アイスストーム後の庭

 

寒々と 凍りつきながらも

ひとつひとつが 静かに灯る

 

赤い実  赤い実

まるで 小さな りんご飴

 

日本の祭りを思いだし

私も氷の中で ぽっと なる

 

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メイン州の冬は、マイナス20度になることが、ひと冬に数回ある。クリスマス前には、数年ぶりに氷雨の嵐がきた。その後、気温があがらず、1週間以上は、木々が氷におおわれていた。

 

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メイン州の詩 ~ 深まる冬

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© William Ash, Bates-Morse Mountain Conservation Area in Phippsburg

 

氷点下の日々

湖も 湿地帯も 川も 白

脳内も 白

そこへ ぽつんと

うかんでくる あなた

 

 

 

(写真集 Between Two Rivers: A Year at Bates-Morse Mountain Conservation Areaより)

日本の思い出~東京都大田区のタイヤ公園

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by William Ash

「日本人は、子供を愛しているね。
大都会でさへも、たくさんの運動場や公園が作られているからね。
それにしても、こんな不思議な公園は見たことがない。」

今から18年ぐらい前、東京を歩き回ってこの公園にたどりついたとき、アメリカ人の夫がびっくりしてそう言った。ところが、実は私は、40年以上も前にこの公園でよく遊んだのだった。

「もう授業はやめて、タイヤ公園にいくか!」
お天気のいい日に小学校の先生がいってくれると、待ってましたといわんばかりに「ワー!」とみんなが声があげた。一列になって歩いて、10分もかからないこの公園にきて遊んだ。

どこもかしこも砂場。あるのは大きな滑り台と古いタイヤぐらい。
タイヤからタイヤへ走り回り、滑り台を一気にすべっては、また走る。
転んでも、ぶつかっても、ゴムのタイヤ。
自分がゴムボールみたいになって跳ね返される楽しさよ。

50代になって、改めてこの写真をみると思う。
年をとると、人間は何かを残したいと思うようになってくるが、
こんな洗練された公園を残せたら、どんなにステキなことだろう。

どこがどう楽しいのか、なにがこうも嬉しいのかわからないけれど、
年をとってからも思い出して、また笑いがこぼれるような、
そう簡単には解けない不可思議な魔法を、
差別することなく、訪れる人にかけてくれる公園、
いったい作った人は、当時、何を見ていたのだろう?

 

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メイン州の詩 ~ Ice Storm, Part 4

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©William Ash

 

「白松ークリスタルな森の主」

 

氷は

一本の針すら 見逃さなかった

白松の葉は

ひと針 ひと針 氷でつつみこまれ

落ちた葉は 雪と氷の間で

標本のように閉じ込められた

 

森は 今

空から放たれた氷の巣の中に沈み

寒風にこすれ合いながら

痛げに メタリックな音をたてている

 

けれど‥‥

太陽が顔を見せれば

絡みあう氷の網に 光が 一気に走る

無数の網の中を 交差して照りかえしながら

森をきらめかせ

触れたものを容赦なくとらえていた氷を

その輝きのうちに 消していく

 

かけらに変え

しずくに変えて

森の底へと 消していく

 

そして

ひときは高い樹冠をもつ白松が

いち早く

青空の息吹の中に 放たれる

 

メイン州の森の主たる白松は

こうして 数十年 数百年と

厳しい冬を超えていく

 

輝きの中に立つ

自らの姿を 知っている

 

(注)

ここでいう白松は、Eastern White Pineとよばれる北米の北東部にみられる白松のことで、中でも、メイン州は「Eastern White Pineの州」とよばれている。樹高が高く、50メートルを超えるものも見られ、成木は200年から250年の樹齢がある。

 

 

メイン州の詩 ~ Ice Storm, Part 2

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©William Ash

「アイスストームの朝 12/22/2013」

 

たとえ

「氷におおわれ、道路はたいへん危険です。」と

天気予報のおじさんが声をあげていても

ドアをあけて一歩踏み出したとたんにすべって転んでも

車がまるまる一台 凍りついていても

クリスマス用のケーキを焼いている途中で停電がおきても

あわてることはありません

 

たしかに

氷におおわれた低木は どんどん頭を下げて折れんばかり

来年に実をつけるはずのブラックべリーの枝は 雪原で総倒れ

森からはひっきりなしに 枝がもげるように折れて落ちる音がして

しかも 氷雨はいまも森を打っています

けれど‥‥あわてることはありません

 

本当に息を飲む瞬間は これからです

ひたすら窓の外をみて 待ちましょう

そして 雲間から太陽が顔を出そうものなら

森に入っていきましょう

絶対に見逃してはいけません

すべてが光のかけらとなって輝き

空間がきらめきの音でいっぱいになるあの瞬間を

 

光の中に こつ然として浮かぶ

神々しいイルミネーションの初まりを

 

今はわが森で冬眠しているシマリスだって

もし目覚めて その光景を見たならば

びっくりして また目を回すことでしょう

 

©大坪奈保美2013

ウインター・サプライズ 〜 樹氷

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月曜日 目覚めれば 外は白銀の世界になっていた
まわりの音が雪に吸い込まれて消える 静かな朝
こんな日には 逆に
雪をかぶった木々の 聡明な息づかいが感じられる

その下で 「ハーハー」言いながら
早くも 今年初めての雪かきとなった

時折 枝から滑りおちた雪が
首筋とコートの間から入って 体の中を解けて流れる
スコップを放りなげて悲鳴をあげる我を
白装束の森が 枝をもたげて見下ろしてくる

 

 

メイン州の詩 〜冬の足取り 2013

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by William Ash               画像をクリックしてご覧ください。

この明け方の雨音は 夢のなか?
潤いのある水音は 春の目覚め?

いや いや これが  冬のやりかただ

今年は まず
晩秋に使者を送ってきた
それはまだ 暖かみを残す光のなかで
裸の木々が浮かび上がってくるような午後だった
青い空から 白い花びらのような粉雪を降らしてきた
ほんの数分のことだった

ところが、数日後には
空全体を鳴らして 北極気団が押し入ってきた
弱い木々を 二日間にわたってなぎ倒し
闇にまぎれて 大地を雪で覆っていった

それを見た瞬間 私の心から消えた

たった数センチの雪の下に横たわっている秋が
凪いだ海に浮かんでいたたくさんのヨットが
豊作によろこんだ赤いトマトが
道ばたに咲き乱れていたオレンジ色のユリが 消えた

私は 冬しか知らない北極の生き物になった

蒔きストーブの前にじっと座って
車のフロントガラスの向こうを真っ白にする吹雪を妄想した。
せいぜい5回ぐらいしかない雪かきが
毎日あるかのように思えて心臓が重くなった
証拠にも無く またコートを買うことを考えた

それなのに……

今朝は打って変わって この豊かな雨音が
懐かしい響きをもって 目覚めをさそってくる
カーテンを開ければ
水をたっぷりと吸って 芝は青く
落ち葉は 前よりも一層、色が深い
息を吹き返したのは 秋か それとも我が心の春なのか?

いや いや もう ぬか喜びさせられるのはうんざりだ

見ててご覧!
冬は 今日14度まで気温をあげて溶かしたものを
明日の朝までに 一気にマイナス5度にして
ブラックアイス(注)に仕上げてみせるから
こうして Thanksgivingのパーティーに
はやる心をくじかせて 急ぐ足をすくうのだ

これが  冬のスタイルだ
こうして 冬はやってくる
毎年 人をやきもきさせながら
しかも 見事に 足取りを変えてやってくる

メイン州に住んで7年
11月から12月のこの変わり目が
どうにもこうにも 好きになれない

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先週のThanksgivingの一週間は、快晴だったり、暴風、雨、雪と天候が目まぐるしく変わった。 ときにマイナス25度ぐらいまで下がるメイン州の冬にまだまだ慣れていないので、ほんの冬の入り口でありながらも、この季節の変わり目は落ち着かない。

(注)ブラックアイスとは、路面にできた薄い氷の膜。テカテカと黒光りして見え、アスファルト上の水のようにしか見えないが、実際には凍結しているので、とても滑りやすくハンドルをとられやすいため、非常に危険とされる。