黄昏どきは、不思議な時だ。日中ほど明るすぎず、夜ほど暗すぎず‥。人間の視覚には、形は影へと消えるにつれて、固体性をなくすようにみえ、カメラには、ほとんど内側から輝いているように見える。
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どうして生命があるのか? 自己編成ができる生命というものは、宇宙の自然の産物なのか?
なんでこんなことを思うかといえば、グレイト・ゴルフ・ウィルダネスは、最後の氷河期に氷によって削られ、残されたのは岩の世界だったのに、そんなきびしい地形にもかかわらず命は繁栄した。何層にもなって生命体がコロニーをつくり、今の美しい世界をつくった。その生命体が生息している山は浸食されるがままなのに、生命は多様化して、想像もできないぐらい複雑化した。
物質的な化学反応のなかに置かれたままのものと、意識的に変わっていける生命体とのちがいは、なぜ、どこからくるのだろう? それとも、五感では、山も石も岩も、実は意識をもって生きている生命体ということが見えないだけなのだろうか?
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グレイト・ゴルフ・ウィルダネス・エリア( Great Gulf Wilderness Area)を、ピーボディー川が流れている。この川は、風景のなかを曲がりながら悠々と流れるような平な川ではなくて、ごろごろ転がっている巨岩や石の上を勢いよく流れる山の川だ。
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地図上では、東京から大阪まで一直線で、400kmぐらいあるらしい。アメリカ東部には、その1.5倍よりも長いおよそ644kmにわたってのびる森林地帯がある。ニューヨーク州から、メイン州北部のカナダ国境までつづいている
ノーザン・フォリスト(Northern Forest)だ。
固有の生態系をもち、「人の手によって荒らされていない森」というのが、この森林地帯のうたい文句らしい。それでも、森のなかの村や町、小さな市では、200万人の人が住んでいる。
先週末に、この地域内にあるグレイト・ゴルフ・ウィルダネス・エリア( Great Gulf Wilderness Area)をちょっと歩いてみた。前のようにワシントン山の氷河圏谷の上から見下ろすのではなくて、圏谷の底に入ってみたわけだが、緑が香り、平坦でひっそりとした小道がつづいていた。
人間なら、すっかり瞑想モードに入りそうな道だが、植物のほうは、使えるものは何でも使って、林床から樹冠まで広がっていた。氷河期の迷子石や、氷河にけずられて落ちた巨大な岩もなんのその。シダ、苔、木々が生えて、まるで岩ひとつが小さな森のモデルのようになっていた。
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気候がつねにストレスをかけてくる厳しい条件のなか、しかもハイカーの不注意な数歩で、岩くずれがおこって、ふかい痛手をおうような場所でも、生命は絶妙なバランスを保って生きる。ワシントン山の頂のすぐ下にある、グレイトゴルフワイルドエリアとよばれる氷河圏谷の先端は、岩しかないような所で、世界でも過酷な気象条件で知られているけれど、苔や野花が生息していて、夏にだけ車や徒歩でやってきて「あ〜、きもちいい〜」とかいって、すっかり山を満喫した気分でいる観光客の足元で、静かに命の不屈さ、未知数な力を誇っている。
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ホワイトマウンテン国立森林公園のスイフトリバー (Swift River) は、カンカマンガスハイウェイ (Kancamagus Highway) にそって流れている。月光に、岩と勢いよく流れる水がうっすらと輝く。岩は水の流れをかえ、水は岩の形を変えていく。水と岩は、互いの形を変え、変えられるということを相互に続けながら、この美しい景観を造り上げている。
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