記憶 Part 1

このところ、記憶と家系について想いをめぐらせている。自分は、拡大家族という大所帯の家族構成から抜けでた世代だ。祖父母と曾祖父母の品物をいくつか受け継いできたものの、彼らの記憶は、漠然としたものしかない。彼らがどんな人たちだったのか、話は聞いてきた。しかし、私には、ほんのひとにぎりの遠い記憶しかなく、断片的だ。今ではみんな、亡くなっている。残されたものは、こうした彼らの物だけである。下の写真は、現在、製作中のプロジェクトからのものだ。

 

vise_4

母方の祖父が使っていた小さな万力というもので、工作物を挟んで固定する道具である。祖父はカナダのノーバスコシアで、ボートを作っていた。背が低く、無口で、厳格な人だったのを、なんとなく覚えている。あまり話をした記憶はない。

ただ、いっしょに遊んでくれた記憶がひとつある。祖父が、自分の杖の持ち手を私の足首にひっかけては、私を転ばせた。幼い私は、声をあげて笑った。こんなことを数分の間、私たちは繰り返したのだった。