ギアトーク Part 1 ~ フルフレイム撮影

ギアトーク 1~ 9 では、
使ってきたカメラやフォトテクニックなどを紹介しています。

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©William Ash

Photo: Mamiya 6 and 75mm f/3.5 lens

 

Part 1の今回は、フルフレイム撮影についてです。

フルフレイムという言葉は、今では35ミリのフィルムフレイム (24 mm x 36 mm) センサーの大きさに使われていますが、元々の意味は全くちがい、フィルムカメラ時代には、「トリミングなどしていない、カメラのフォーマットのままのネガやプリント、画像」を指して使われました

このページにおけるフルフレイムは、
フィルムカメラ時代の意味において使っています。

画像領域は、カメラのフォーマットそのまま。かつ、あとで暗室で修正したり加工せずに、カメラが撮影したままをプリントするという表現形式を、ストレート・フォトグラフィー (straight photography)といいますが、フルフレイムは、この表現形式の要でした。僕はフルフレイムが好きで、若いころからフルフレイムでやってきました。

 

プリント画像がフルフレイムであることを
写真家はどうやって証明したか?

ネガキャリアのアパ―チャをギコギコとやすりで削って、ネガの画像部分よりも大きくし、わざと画像のまわりに縁取りのような黒線が出るようにしました。こうれすば、ズルなし(トリミングや修正加工なし)のフルフレイムの画像であるとわかるわけです。ここに載せたフィルムカメラで撮った写真も、すべて黒線で縁どられています。

 

どうしたら効果的な構図がとれるか?

フルフレイムで撮影する場合、修正不可、フレイムの型もきまっているので、撮影時の構図の良し悪しがすべてです。失敗作は、使い物にはなりません。一発勝負というか、ぶっつけ本番的な厳しい撮影方法です。ところが、ベストな空間とベストな瞬間を同時にとらえるための、得策はありません。写真家にとってフルフレイムでの撮影は、箱の中に世界をいかに上手にはめ込むかという、究極的なパズルに挑むようなものです。

©William Ash

Photo: Wista VX, 210mm lens, and 6×6 roll film back. Lens shifted between consecutive exposures and film scanned as one image.

 

シャッターを切った瞬間が、すべてを決めるフルフレイム撮影。
成功のカギは、何でしょうか?

こう言ってしまったら身も蓋もありませんが、訓練、練習を繰り返すしかありません。僕の場合は、フルフレイム撮影に挑み続けている間に、フレイムが、被写体を見るものから、被写体そのものへとシフトしました。目の前に広がる世界の特定部分を抽出することで、フレイムが、新しい秩序を創造します。その場のあらゆる相関関係から、部分集合を作るといえばいいのでしょうか。どの関係を選ぶかは、空間、時間、光、色、形、状況といった複数の要因によって決まってきます。

 

ベストの構図の秘密は?

同じ被写体をとったのに、ある構図のほうが、他の構図よりもずっとインパクトの大きいいい写真になる場合があります。いったいどこからその強いインパクトがくるのか? 言葉で説明するのは、難しいものです。ある形式に従ったからとか、概念的な構図だったからとか、言えないこともないでしょう。

でも、正直なところ、謎なのです。僕の経験によれば、インパクトのあるいい写真には、知的、感傷的な表現以上のものがあります。見る側の潜在意識による認識過程は、つねに驚きや歓びを求めていますが、これに「訴えるもの」を持っているのです。だからといって、この「訴えてくるもの」が深淵なものである必要はなく、むしろ「真実」という曖昧で言い古された言葉とは無関係のです。僕にとっては、この謎こそが、フルフレイムを続ける理由、パズルを続ける理由です。

©William Ash